偏見: 緑内障と点眼
2012-02-11


死ぬほど多種類の緑内障の点眼が出ている。最近は「コンプライアンス」が重視されている。「処方しても患者が使わなきゃ無意味」ということです。
相互に効果の有意差もあったりする。作用メカニズムがちがえば併用可能だが、あまりたくさん出したって、コンプライアンスは落ちるばかりだ。在庫の問題も考えたら、効果の低いものをあれこれちまちま組み合わせるのも馬鹿らしい。一方で、費用の問題もある。

ピロカルピンしかむかしはなかったが、その後長くβブロッカの時代が続いた。いまではプロスタグランディン花盛りである。
以下、商品名を出すこともあるが金はもらってない(笑

緑内障は高眼圧で神経障害発症のリスクが上がるが、低眼圧でもおこる。だが、治療法は、眼圧がどうであれさらにそれを下げる、しかない。
余談だが神経保護だのいってる向きもある。可能性は否定しないが、軸索輸送が解析できなきゃ本当の仕事ははじまらないし、細胞死を解析するにしても「実際には不可能な濃度の薬物に細胞を浸したらそれっぽい現象が見えた」になるだろうと思っているのだが、それはさておき。

薬剤の効き目というのは基本はもとの眼圧に比例する。有効な場合、高い眼圧ほど数値としてはよく下がる。逆に言うと、低い眼圧ではよくわからない。ましてや、あのゴールドマン眼圧計のおおざっぱな目盛りで神経質に1上がったの下がったのいうのは無意味。
つまり低眼圧領域では変化はほとんどわからない。高眼圧領域での効果から類推するしかない。
加えて、プロスタグランディン系薬剤は、眼圧も、その脈圧(心臓でいうと鼓動、拡張期と収縮期の差)も全眼圧域で下げるのだが、βブロッカは、低眼圧領域では脈圧をむしろ上昇させるのである。眼圧でいうと、低眼圧領域でβブロッカをつかうのは好ましくない可能性がある(ためにする理屈になってるのは自覚している)。

キサラタン(ラタノプロスト)がよく効くので、皆驚いたわけです。いまや後発がでたので値段も安い。通常の開放隅角緑内障の第一選択は文句なしにこれだろう。いっぽうで、高眼圧の場合、βブロッカのほうが効く症例も確実に存在する。
βブロッカでは私はミケランLAが好きですが、朝に上がる眼圧ならチモロール朝1回でもいいかもね、安いしw。エビデンスがないのでこれは余談。
ラタノプロストより有意に眼圧降下が強いのは、データとしてはトラバタンズとルミガン。ルミガンは、トラバタンズとβブロッカの合剤であるデュオトラバにもそんなに引け目ない眼圧降下を示すようだ。だだプロスタグランディン系は充血などもつよいので、そっちも考えて選ぶことに実際にはなろう。
炭酸脱水素酵素阻害剤系も、ま、きかなくもない。2種あるが使用回数、使用感がちょっと違うようだ。
ピロカルピンはPAC系でもなきゃ使いにくい。
βブロッカ以外アドレナリン受容体系は、あまり一般的ではなくデータも少ない。経験値が低くて申し訳ないが、あれこれ手を出しても屁理屈の泥沼になるだけなので、私自身は触りません。手術するふんぎりがいつまでたっても得られない。逆に言うと、手術しない医師はここでいろいろ凝ればいいと思う。

というわけで、なるべく少ない点眼数でいこうという選び方の、私の方針です。
ノンレスポンダーもいるし、かぶれて使えない人もいるから、実際には試行錯誤するしかないですが。

正常眼圧緑内障は、眼圧に関する効果はわかりにくいので視野や OCT で進行を判断するしかない。初期はラタノプロスト、それで進行するならルミガン。充血がたまらないならせめてトラバタンズ。いまでは私は手術は、これに対してはしません。
狭義POAGや高眼圧PEG の場合、眼圧降下作用で選ぶ。
まずはラタノプロストかβブロッカ。そこから、併用してザラカムにしてもいいしトラバタンズにしてもいいが、明瞭なつぎのステップは、デュオトラバかルミガン。

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