2013-07-17
久し振りに眼科医にしか分からないことを書きます。
ExPRESS のこと。
トラベクレクトミー(以下レクトミー)で、開窓して PI するのがじつはこんなにストレスだったのかと、気づく。
以下、非常に偏ったことも書いてます。気に入らない向きはするー推奨です。
結膜に濾過胞をつくる濾過手術は、結膜の状態がよくてなんぼである。
正常眼圧型の緑内障で手術するなら初回から濾過手術でいい。ただ、特に低眼圧(low-teen以下)のものをさらに手術で下げるのと点眼でおしきるのとどちらがいいかと考えると、私自身は手術はどうかなとは否定的なのであるが。すりゃいいってモノでもなかろう。
ちなみにその場合の点眼はプロスタグランディンにしている。βブロッカは低眼圧領域でかえって OPA が上昇したりする。アイファガンはわかりません。
高眼圧で原発性開放隅角もしくは PE なら、1度はトラベクロトミー(以下ロトミー)するのがいい。ロトミーしてあっというまに眼圧があがるなら、それは何度やっても駄目だからさっさと濾過手術するがいい。
ロトミーしてかなり時間たってから再上昇したなら、同一創でもういちどロトミーして効く事が多いから、やらない理由はない。しかし、そのあとまた上ったなら、別創でロトミーして結膜に炎症をおこすよりはもう濾過手術するのがいい。
いうまでもないがロトミーは右下からする。筋に牽引糸かけてぐいっと回し、右真横からロトミーする。正面からみて8時くらいのところに弁が作れるはずである。おもったより簡単なのでやってみるべき。てか、これができなくて緑内障サージャンを名乗っちゃいけないw
ま、顕微鏡をふって耳側からやる、という手はあるけどね。
ロトミーと同時に行う白内障手術については、「白内障として必要なら行う」でいい。どうせの機会だから一緒に、なんてことを緑内障をあまりしないどっかの研修指定病院部長がいってたが、「どうせ」で医療を行うのはやめろ。
ロトミーを右横からやるなら、白内障を同一創からするのはなかなか難しいから、ベント方向から角膜切開で foldable を入れる。後日濾過手術するときはそこからなるべく離れた上方でするわけです。
浅前房になるリスクのある濾過手術については、水晶体再建は must である。白内障がなくても同時にやるべき。
ExPRESS についてはMMCレクトミーほど早期の合併症がない。術後の白内障進行も少ないのだろうが、濾過胞がある眼に追加で白内障手術するのはよろしくなさそうにいまのところ思っている。皮質や核がつまるんじゃないかという人もいる。手術中にそんなにとばすもんかなとは思うし手術後でいうと重力で下にいくだろうから大丈夫だろうとも思うのだが、その人は自分の手術で破片が飛びまくるのを見て気になるのだろう。正直な話で、理解は出来る。HealonV でブロックできそうにも思いますがね。
話は違うがシリコンオイルが ExPRESS に入ってるのは隅角鏡で見たことあるw
まあ単にそこにあったのか通過障害になってたのかはわかりませんが、眼圧は下がっていたので、あっただけなんでしょう。
ステロイド緑内障はロトミーが効くというのだが私にはいまいちその印象がない。そもそもロトミーはとくにシュレム管内壁あたりに流出障害があって眼圧上昇するものに効くのであって、房水産生過多症例に効く理屈はないと思うのですが。
初回に近ければ近いほど、濾過手術はきく。だから、ロトミーせずにMMCレクトミーばかりして、MMCレクトミーはよく効くという人は、これはこれで正しい。
あと、ロトミーもレクトミーも、高眼圧型の症例での平均眼圧は middle-teen におちつくことがおおい。レクトミーのほうがちょっとは低いようにいわれるが、術前条件を眼圧などそろえて比較したデータは見た事がない。
なににしても隅角辺りであれこれ小細工するかぎり結果はそうかわらないということか。
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