診断書と事務
2012-02-04


若手が、診断書で問題になってるとか言うので話を聞いた。

1) 硬膜下血腫で手術したがぜんぜん目が見えないという患者が、障害者年金の書類を持ってきた。網膜までなにもなく視神経乳頭もいい色してるんだが光覚のみで視野も取れないという。対光反射はというと RAPD はないとかいう。そうじゃなくて直接反応自体はというと弱いような気がするそうな。しかし対光反射は、外側漆状体までがおかしいんじゃなきゃ、上丘経由の反応で視力に直接はかかわらない。ERGもとれる。ポータブルなので、PhNR はわからんけどね。
本当に見えないのかもしれない、しかし、説明が出来ない。皮質盲ってのもそりゃあるんだけど。

ちょっと怪しいねえ。ほんとにそこまで悪いんだろうかね。
せめてVEPをとってもらったらどうかね。それで所見がなけりゃ、眼科ではわかる範囲に異常がないので自覚だけでは書けないと、手術した脳外科に行ってもらえ、たぶんむこうでも困って打ち返してくるだろうから、そのときは大学に行ってもらえ、当院では障害部位を特定できないので書けないといえばいい、と答えた。 fMRI なんてものだってうちにはないんだし、よりよい設備で精査する必要はあるだろう。

2) 業務上の事故で片目がつよい打撲で失明、これは器質的にそうなってる。なんとか回復しないかというので、事故後一月あたりで大学に紹介した、そこまでの休業については書類を書いたという。大学では治りませんといわれたようです。ところが、片目じゃ仕事は出来ないそのあとの休業に関しても療養が必要との書類も書けと、ガテン系の会社の社長がのたくりこんできて、あわないといけないと。社長は整形の外来でも騒いだ既往あり。
書類をかけともってきた、そのあと勝手に休んでいるそうな。

これはちょっと困る。
さっき1)の書類にしても、事務がはいはいと受け取って、書けともってきたのかと訊いたらそうだといった。

その手の書類は、事前に必ず医師に、書けるかどうか確認してから受け取るか、医師が書けない事もあると念を押せといっていたのですが、公立病院は役所の一部であって、異動で、ぜんぜん事情を知らん課長がやってきたのでまたやり直しになるようだ。申し送りとかでけんのか連中は。

事務に乗り込む。

1)のようなものについて、自覚だけで診断書をかいて、備考欄に「所見と訴えに乖離がある」とかいたのに通ってしまい、詐病の疑いが強いと連絡しても、役所は、そんなことはこっちではわからんといいくさったことがある。この症例についてはうちでは原因不明でほんとうに見えてないかもわからんのだから、診断書をほいほいうけとるんじゃないよ、あんた下手したら詐病の片棒をかつぐことになるよ、いいの?とまず一撃。

2)だが、医師が休業についての書類を書けるのは、それが療養上必要な場合だけだ、片目がつぶれて不便だといってもそれは治らんのだし、目がつぶれたって炎症や感染がどうのと言うのはせいぜい2週間だ。それ以上休んでたってなにもおこらない。仕事上不便というのは医師の考えることじゃない。片目で出来る仕事を考えてやれ。勝手に書類持ってきて次の日から休んだといわれても困る。これについて先方の雇用者と医師が話をする必要すらないだろう、事務がちゃんと相手せんといかんじゃないか。前に合意があったのにいったいどうなったんや。

若手を連れて、ひろい事務室で、新任課長にまくしたてた。やな医者だねw まわりのデスクの職員たちは知らんふりしてお仕事してらっしゃる。

役人はトラブルを嫌う。医師がおとなしければ医師にあれこれやらせようとするが、医師がうるさければ、すくなくとも医師にはケツを持ってこない。こっちは院長室にカチこむつもりはいくらでもあるし過去にもそうしている。


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