手術はどこまでできたらいいのか
2011-10-08


大学のような偏った場所ならともかく、市中の普通の病院、それも、そのあたりにはまともに入院手術できるところがほかにないというところになると、そこそこの手術は自分でできたほうがいい。

分野によっては、特化していて、それなりの資本注入もいるし、症例も少なかったり近所じゃなくても専門病院もあったりで、あえて手を出さないという行きかたもある。
私の感覚では
「小児や新生児の手術」
はそうだ。いちいち全身管理が術後も大変だし、道具も特殊なものが必要、加えて専門病院には経験値をあげてもらわねばならない。
未熟児網膜症2型の硝子体手術なんて絶対にしない。お願いして送らせてもらうのだが、先方が、周辺のレーザーだけさせられるのが嫌なのかもしれないがなかなか信用してくれないこともある。そういうときには Retcam が欲しくなる。見れば一発だからね。レーザー後の剥離のときに輪状締結だけは専門家に言われて全麻でやったことあるが、するべきだったかいまだに迷う。
斜視ならしなくもない。あとあとの視能訓練も考えると遠方はかわいそうだしね。

「角膜移植」
も、通常の全層移植はしますが、フェムトセカンドレーザーかませたり、分層移植とくに DSAEK で内皮だけ移したり、ということになるともう無理。輸入角膜も扱わないし。

なかなかその気にならなくて、というのが「涙道手術」で、私はDCRについては、鼻内法はできません。それ用の内視鏡を買いそびれて結局やらなかった。骨は削れるが、これもがんがんするのがかわいそうなので、ちょっと離れた専門の先生に、鼻内法でどうでしょうと送って、そのまま先方で骨削ることになったということが多い。

逆に言うと、それ以外だったらそこそこできるようにしてきた。古い技術をあえて使うようにもしている。きつい白内障だと無理に超音波(Ozil 含む)でやるより ECCE のほうが好きだ。剥離はできたら経強膜バックルでやりたいし、硝子体もワイドビューは使えるが内視鏡も好きだし、ランダースプリズム程度のなんちゃってワイドビュー使うのと前置レンズ使うのと、たぶん時間はそう変わるまい。トラベクロトミーもする。

しかし、そういうちょっと古びた手技については、若いもんにどもまでやらせるものだろうとも思う。そもそも、よそで育ってきてある程度固まると、それ以外のものに手を出したがらない傾向が最近強いような気がする。

そう思ったのは、それなりに硝子体手術までこなせるのに、「PI」やったことがない、という若手がいたからです。
狭隅角のACGには水晶体再建をして隅角あけて、というのは基本であるが、炎症で虹彩後癒着してブロックになるので PI したい、ということは必ずあるのです。レーザーだと何度やってもふさがります。
やりたそうな顔もしないので、これどうする、ときいたら、カッターで切りますというのだが、それだけのために高いカッターおろすんかい、というと、うーん、といってた。ま、前嚢セッシとサザランドの鋏で、中でつまんでちょっきんやる手もありますが、前房に入るのもなんだかですしね。
輪部を切って虹彩根部をぷりんとはみ出させて切るだけのかわいい手術は、できてもいいと思う。

それもこれも含め、「覚える気に」ならないと、手術というのはできるようにならない。手術書やビデオからというのはちょっと効率悪いし、実際にやってる人から学ぶのがいいのだ。逆に言うとやる人がいなくなったら誰にもできなくなるわけで、技術の継承というのは、どこの職人の世界でもそうだが、大変だし、はかない。
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